長州藩を舞台にした歴史小説を多く手掛けた直木賞作家の古川薫(ふるかわ・かおる)さんが5日、頭部血管肉腫で死去した。92歳だった。通夜は6日午後6時、葬儀は7日午前11時から山口県下関市楠乃2の551の115の下関典礼会館で。喪主は長男貴温(きみはる)さん。
25年、下関市生まれ。旧制県立宇部工業高校を出て、特攻に使われた機体などを生産していた日立航空機羽田工場に勤務するなどした。戦後、山口大を卒業し、中学教員を経て山口新聞社に入社。編集局長だった65年、明治維新期に苦難の人生を送った長州藩士を描いた「走狗(そうく)」で直木賞候補となり、その後、作家に転じた。
91年、オペラ歌手藤原義江を描いた「漂泊者のアリア」で第104回直木賞を受賞。同賞の候補になること10回は最多で、当時、65歳の最年長受賞者としても話題になったが、前年の受賞者、故・星川清司さんが68歳だったことがその後わかった。
長州史に詳しく、幕末や明治維新を題材にした歴史小説が多い。高杉晋作や吉田松陰には特に強く共感を抱いた。獄中の吉田松陰を描いた「吉田松陰の恋」は「獄(ひとや)に咲く花」として映画化された。
近現代の人物にも守備範囲を広げ、下関市出身の女優田中絹代を描いた「花も嵐も 女優・田中絹代の生涯」は02年、尾崎秀樹記念・大衆文学研究賞の特別賞を受賞。地元選出の安倍晋三首相とも親交があった。
太平洋戦争中に特攻機を整備した実体験に基づいて、15年に「君死に給ふことなかれ 神風特攻龍虎隊」を手がけた。
明治維新150年にあたる18年、新年にあたっての朝日新聞への寄稿では、維新や第2次世界大戦で多くの若者が死地に追いやられたと指摘。「またもや大勢の若者が青春を奪われんとする現実が、すぐにも現れそうな日々の情景を前に、ただ賑(にぎ)やかな記念の祭りとするのではあまりにも悔しい」と語りかけた。
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