根絶しない児童虐待、元被害者は「いつか自分もキレて手をあげてしまうのではないかと…」 - Crune Blogs

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2018年6月8日金曜日

根絶しない児童虐待、元被害者は「いつか自分もキレて手をあげてしまうのではないかと…」

「もうおねがいゆるして」。今年3月に亡くなった船戸結愛ちゃん(当時5歳)がノートに記していた言葉が、日本中に大きな衝撃を与えている。

6日、警視庁は父親の船戸雄大容疑者と母親の優里容疑者を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕した。2人は今年1月頃から東京・目黒区のアパートで結愛ちゃんに十分な食事を与えずに衰弱させ、医師の診察も受けさせず死亡させたとみられている。発見時、体重は平均の19kgを大きく下回る12kgで、両目の下には、両目の下にはアザ、身体には複数の傷があったといい、死因は栄養失調が原因とみられる肺炎だった。

 優里容疑者の連れ子だった結愛ちゃんに対し、雄大容疑者は"しつけの一環"として、ひらがなの練習を命じたという。「しつけとして平手で叩いた。空の浴槽に入れて、水のシャワーをかけた」。結愛ちゃんは自ら早朝4時に目覚ましをかけて起きて、机に向かっていたという。

 子どもや若者の虐待、貧困などの支援に取り組んでいるofficeドーナツトーク代表の田中俊英氏は「虐待の被害に遭っている子どもの数は、実際は通告数の何倍もいると思う。ただ、そうした子どもたちの多くは幼児のため、自分のことを言葉で表出できないまま亡くなっている。今回は皮肉にも父親が無理やり言葉を獲得させたことで、当事者としての気持ちを遺すことができたという事件だ。我々は虐待だと考えるが、当事者は行き過ぎたしつけとしてやっていることが多い。一方、"自分たちがやっていることは虐待かも"と世間から責められるかもしれない子どもを隠し始めたのだろう」と指摘する。

 虐待について実母である優里容疑者は「自分の立場が危うくなるのを恐れ、見過ごしていた」という主旨の供述をしている。これについて、田中氏は「母親が暴力をふるうのを見て見ぬふりをしたのは、自分を守るという意味もあったと思う」と推察。幼少期に虐待を受けていた経験を持つ橋本隆生氏は「3歳の時に両親が離婚して、6歳の時に父親が再婚、弟が生まれたが、それからはご飯をもらえなかったり、僕の存在を消すような扱いを受けていた。でも、義理の弟が手を上げられているところは見ていない。僕がただただ邪魔だったのかなと思った」と振り返る。

 「日記の文章に、親に愛してもらいたかった、褒められたかったという思いが込められている気がした。私も自分に手をあげてきた親を憎む気持ちはあったが、心のどこかに認めてもらいたい、褒めてもらいたいという気持ちを持っていたと思う。好きになってもらうためにはどうしたらいいんだろうと考えていたことがあった」。

 "児童虐待は連鎖する"という見方もある。橋本氏は「自分がそういう父親の元で育ったので、常に不安に思っている。子どもはかわいくて仕方ないし、自分の父親が理解できないが、いつか自分もキレて手をあげてしまうのではないか、歯止めがきかなくなるようになってしまうのではないかと」と胸の内を明かした。

■「子どもを社会で守るシステムを作るしかない」

 一家が東京に引っ越す前に暮らしていた香川県で、結愛ちゃんは児童相談所に2度も保護されていた。一度目は一昨年の12月、暴力を逃れるためパジャマ姿でいたところを保護されたが、児童相談所との話し合いで雄大容疑者が謝罪と反省の言葉を述べたため、3か月後には家に戻っている。しかし翌月、自宅前にいた結愛ちゃんの口にアザがあったことを通りがかった警察官が見つけ、再び児童相談所に保護されることになった。雄大容疑者は2つの事件で書類送検されているが、いずれも不起訴処分になっている。

 そして今年1月、一家は東京へ引っ越す。香川での情報を引き継いだ品川児童相談所では一家の自宅を訪ねたこともあるというが、優里容疑者から協力を拒まれ、結愛ちゃんとは会えないままだったという。品川児童相談所所長は「香川からの引き継ぎで虐待があるという認識はあった。ただ早急な対応を取らなければならないという判断がつかず、今回のようなことになるとは予測できなかった」と話している。

 田中氏は「大都市の児童相談所は職員の数が少なく、職員一人あたり50〜70人もの当事者を抱えている。やはり20人くらいが限界だ」と指摘。橋本氏は「僕も中学校1年生のとき、児童相談所の一時保護所を何回か経て保護施設に入った。児童相談所にも警察にも何度も"家に帰れない。家に帰ったら殺される"と必死に訴えて、ようやく入れた。5歳児が同じことをするのは無理だ。周りが何とかしてあげるしかない」と指摘した。

 東京工業大学の柳瀬博一教授は「こういう事件の時には予防策を考えたくなるが、それは無駄だと思う。いじめと一緒で、止めることはできない。"家族システム"というある種の幻想に寄りかからず、子どもを独立した存在として社会が認め、育てていく仕組みを作り、事件になる手前で止めるしかない。日本人には異常に見えるかもしれないが、アメリカでは家庭内で暴力があったら逮捕される。それは日本よりもはるかにひどい殺人や虐待の問題が表出したから。日本以上に家族幻想があるアメリカでも、子どもを社会で守るシステムを作るしかないということになっていった」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

放送済み『AbemaPrime』の映像は期間限定で無料視聴が可能。

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続きを読みます http://news.nicovideo.jp/watch/nw3579092

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