藤井聡太四段の登場、「ひふみん」こと加藤一二三九段の引退、叡王戦のタイトル戦昇格――いま、日本じゅうが将棋の話題に沸いている。
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とりわけ藤井四段の“デビュー以来 公式戦29連勝”という記録はインパクトが強く、ネット上ではしばしば「将棋マンガの主人公みたいだ」「いや、マンガでもあり得ない」など、現実離れした数字として語られている。
実際のところ、マンガに登場する棋士で、藤井四段と好勝負を繰り広げそうなキャラクターはいるのだろうか? 有名な将棋コミックから、独断と偏見で4人の棋士をピックアップしてみた。
宗谷 冬司・登場作品『3月のライオン』
心に深い傷を負った少年・桐山 零がプロ棋士となり、周囲の人々と交流しながら成長していく姿を描いた人気作。その作中でプロの頂点として君臨するのが宗谷名人だ。
史上最年少での名人位獲得、史上初の7大タイトル独占という偉業を達成しており、どんな棋風にも対応できる万能タイプ。主人公の零もあらゆる方法で強さを追い求め、中学生でプロデビューした天才棋士の1人だが、そんな彼を対局で一蹴して格の違いを見せつけた。
中性的な容姿で、ふだんは物静かだが、いざ対局になると神がかった強さを発揮。他人からは「ギリギリ人の姿を保っているだけの、将棋の鬼」「悪魔」「化け物」などと形容される。
ちなみに実績面のモデルとなった羽生善治三冠は、今年3月に本作の映画公開を記念したイベントで、非公式対局ながら藤井四段に勝利している。もし宗谷名人がマンガの中から飛び出し、藤井四段と戦ったらどちらが勝つか? 興味ぶかいところである。
大原 巌・登場作品『月下の棋士』
伝説の名棋士に育てられた天才少年がふらりと東京に現れ、将棋界に旋風を巻き起こす傑作コミック。対局中の涙、絶叫、心臓停止など苛烈なシーンも当たり前で、勝負に命をかけるプロ棋士たちの生きざまがダイナミックに描かれる。
そんな本作で、序盤のボス格として主人公・氷室 将介の前に立ちはだかるのが、十五世名人の大原 巌である。受け将棋を得意とし、純粋な棋力だけでも作中トップクラス。だが本当におそろしいのは、相手の心をゆさぶり対局を有利に進める「盤外戦」のうまさだ。
タイトル挑戦時に上座を奪って相手をイラつかせる(普通はタイトル保持者が上座)、誰も見ていないところで土下座して八百長を持ちかける、重病で酸素ボンベが必要な対局では「ボンベ残量が2時間しかない」と告げて相手を脅すなど、どんな手段を使ってでも勝利をもぎとりにいく。
藤井四段にかぎらず、もし現代の若手棋士がこれほど老獪な猛者と対戦したら、どういった展開になるだろうか。
峠 なゆた・登場作品『将棋めし』
プロ棋士たちが食べる「勝負めし」にフォーカスした、ネットで話題の将棋&グルメコミック。その主人公を務めるのが、峠 なゆた六段だ。
可憐な女性でありながら、真っ向勝負で男性プロからタイトルをもぎ取る実力者。「対局相手と同じものは注文したくない」「相手が竹のグレードを選ぶなら、自分は松を注文する」など食べ物へのこだわりが強いキャラとして描かれている。
その食欲は棋力にも影響をおよぼし、劣勢時でも食事をきっかけに打開策をひらめくほど。彼女の食事メニューは作中の将棋雑誌で記事にされることもあり、「将棋界の人たちはどれだけ食べ物が好きなんだよ!」と感心せざるをえない。
なお、現実の将棋界もなぜか食事ネタには敏感で、ネットやテレビ番組で藤井四段の「勝負めし」特集がたびたび組まれている。棋力勝負もさることながら、この両者の“めし対決”を見てみたいものである。
谷生・登場作品『ハチワンダイバー』
プロ棋士の一歩手前で挫折した青年・菅田 健太郎が、天才美少女棋士の中静 そよに一目惚れし、彼女とともに裏棋士集団「鬼将会」打倒にむけ進んでいく物語。将棋マンガとしては最大のボリューム(全35巻)を誇り、ギャグ、恋愛、アクション要素も盛りこんだ欲張りな作品になっている。
谷生(たにお)は鬼将会を率いる謎の多い男で、ラスボスだけあって実力は文句なしの最強。あらゆる将棋の戦術に精通し、現役プロ棋士ですら軽く倒してのける。世界じゅうに将棋を普及させ「将棋によって人類を進化させる」ことを最終目標とするなど、超個性的な棋士として描かれている。
将棋の強さが価値観の根本にあり、敗者は精神崩壊しようが死のうがまったく構わないというメンタル面も強さの秘密。マンガでしか存在できない特殊なキャラクターだが、藤井四段や羽生三冠といった現実の超一流プロが“プロではない最強棋士”と戦うシーンを想像してみると、なかなか楽しいかもしれない。
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