全身に転移したがんのため9月15日に亡くなった女優樹木希林さん（本名・内田啓子、享年75）の葬儀が同30日、東京都港区の光林寺で営まれ、関係者約500人、一般ファン約1000人が参列した。喪主は夫でミュージシャン内田裕也（78）が務め、長女内田也哉子（42）が喪主に代わってあいさつした。夫婦のきずなを、也哉子や夫で俳優本木雅弘（52）をはじめ、親交のあった人々が語った。
希林さんは8月中旬に大腿（だいたい）骨骨折で入院した時、毎晩のように「裕也さんに会いたい」と話していたという。家族が驚いた、希林さんの素直な言葉だった。
本木が、入院から最期までの様子を明かしたところによると、病院から自宅に戻った翌日、容体が急変した希林さんに、内田が電話で「もしもーし、もしもーし！ おい、しっかりしろ！」と呼び掛けた。声が聞こえたのか、本木夫妻の長男でモデルUTA（21）の手を握る希林さんの力が強くなった。声が聞こえたようだと聞いた内田は「ありがとう、ありがとう」と話したという。
内田は亡くなった希林さんと対面すると「きれいだ、きれいだ。昔から美人だと思っていた」と笑い、希林さん愛用のグラスについだビールで献杯。荼毘（だび）に付された希林さんのお骨が骨つぼに納められ、ふたが閉められる時、内田が「ちょっと待て」と止めた。最後に納められた頭部の骨を見つめた内田は、あごの骨をハンカチに包んで、そっとポケットに入れたという。
今春、希林さんは医師から「年内持つかどうか。場合によっては2～3カ月」との余命宣告を受けた。希林さんは長女夫妻には報告したが、内田には言わなかった。葬儀の相談に長女夫妻と光林寺を訪れた時も「私が先か、裕也が先か分からない」と、あっけらかんと話したそうだ。40年以上別居婚を続け、2人にしか分からないきずなは、生や死を超えたところにあったのだろう。
喪主を務めた内田は、スタッフにお茶やいすの指示を出すなど、参列者を気遣っていたそうだが、葬儀が始まると一転、微動だにせず希林さんの遺影を見つめ続けた。
かつて希林さんが人生の最後に聞きたい曲として挙げた、若き日の内田の「朝日のあたる家」が流れる中、UTA、伽羅（19）玄兎君（8）の3人の孫たちに支えられ、内田は静かに退出した。【小林千穂】
▼主な参列者 AI、浅田美代子、安住紳一郎、安藤和津、安藤サクラ、内山理名、緒形直人、奥山和由、岸部一徳、岸本加世子、北大路欣也、黒木華、崔洋一、笑福亭鶴瓶、竹中直人、田中麗奈、鶴田真由、中居正広、永瀬正敏、橋爪功、布川敏和、松岡茉優、松田美由紀、松村邦洋、松本明子、萬田久子、宮沢りえ、薬丸裕英、箭内道彦、山本未来、YOU、吉永小百合、ラモス瑠偉、リリー・フランキー（敬称略）
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